大樹連司「オブザデッド マニアックス」

オブザデッド・マニアックス (ガガガ文庫)

オブザデッド・マニアックス (ガガガ文庫)

前作、放課後ロケッティアがおもいのほかヒットだったので、購入。前作と同様、意外とツボに来ますね。こういう出会いがあるから、本屋巡りは止められない。

学校にゾンビが来る妄想。テロリストが来る妄想。普段は冴えないオレ。でもここぞとばかりは大活躍で、周囲のスクールカースト上位の連中共も一目おく存在に。普段は冷静な委員長はパニックへ。でも冷静なオレは、委員長に変わってクラスをまとめる。さらにクラスのヒロインの窮地を救って、モテモテ街道一直線へ・・・・

こんな妄想が現実に起きます。ただし、委員長は、委員長であることをやめ、専制支配者になりますが。委員長が創りだしたコミュニティは、カースト制度と変わらない。学級内か、対ゾンビ用コミュニティか、の違い。

さらに、委員長は、この存在を待ちわびていた。主人公・安東丈二も待ちわびていたけど、委員長・城ケ根梨桜は、違う理由。丈二は、自分が活躍する場所を求めに。城ケ根梨桜は、一歩進んで、自分が輝いて死ぬ場所を求めて。自分が、輝いて死ぬ帝国。


帝国では、一人ひとりが能力に応じた役割を与えられる。仕事が与えられる。満足感がえられる。


教室では、したくもない馴れ合いをしなくてはならない。クラス内階級がある。真面目だとバカにされる。


でも、安東が選んだ世界は、教室。帝国で満足が得られるとしても、スクールではない、帝国内カーストの創設。見下される第三身分。さらに見下される処刑者たち。

本当に教室が憎いなら、システムそのものを壊さなければいけないはずだ。なのに梨桜さんは、ただ上と下を入れ替えて遊んでいるだけだ

254頁より。

やっぱり、主人公を救うのは、メインヒロインとのキスなわけで。安東くんに救われたことに気づいた丹咲いずなは、教室に戻っても昔のような扱いをしない、と宣言+キス。

あーーあーーー、これ面白いっす。スクールカースト下位の連中がおもいのほか活躍する。そしてヒロインは惚れるってだけではなく。下位は下位として自覚している。でも、階級を否定して、自分が帝国の上位にたとうとするわけではなく。そこんところは安東は一貫しているんだよね。上の連中が下に対して見下す表情に対する嫌悪/気持ち悪さ。

ところで、私、ジュヴナイルポルノなどそこそこ読んでいますが、この作者のえっちいシーンの描写でもかなりのものだと思います。

うん。これ、文句なく満足できた一冊でした。