明月千里「月見月理解の探偵殺人」

月見月理解の探偵殺人 (GA文庫)

月見月理解の探偵殺人 (GA文庫)

先日購入した一冊。半年以上前のモノですが、ふと目に止まったので。

最初はキワモノかなぁ・・・と思ったんですよ。まず、主人公の月見月理解自体がぶっ飛んでいる。女の子なのに、一人称が「俺様」。とんでもない切れ者。暴言多数。相手を落とすためなら何でもあり。そして、最大の長所:特殊能力。相手の感覚を肌で感じ取ってしまう。めだかボックスの行橋未造のアブノーマルみたいな感じか?

だから、理解は、わかってしまう。相手のことを、他人以上に。表面は穏やかな他人の、心のなかの暗いところを。

「いなかったよ、ずっと。本当に誰も。信じられる人間なんてな。だから、れーくん、俺様は期待しているのさ」
「もしかしたら、まだ心が読めない君は、本当にいい人なんじゃないかって」

248頁より。このシーンだけ取り出すと、実は理解は良い人みたいな印象を与えるんだけど、でもこれも観察対象=れーくんを陥れるための罠の一つ。作中で理解の過去も触れてはいるけど、でもそれが本当なのかはわからない。理解なら、あれはれーくんを陥れるために言い放っただけ、という可能性も十分ありうる。全く謎の存在、月見月理解。

ストーリー展開については、おおっと。という感じ。実は読んでいて「あー、どーせれーくんが真犯人なんだろー。ちゃちい仕掛けで読者騙すなよ。読み手が小学生だと思っているの?」と思っていました。ということは、れーくんは真犯人ではありません。
れーくんは自分が犯人だと疑われるように行動しただけ。真犯人=母親をかばって。でも自分が殺されるのは怖かった。だから、自分に矛先が向くことを逃れるように仕向けた、それだけ。

月見月理解が残したもの。人間の外側の内側。木崎さんは女王様として見下していた相手から、完全に逆転された。宮越さんは、自分が策謀家だということを見抜かれた。どちらも狭い学校という空間では居場所が喪失するほどの致命傷。理解のように生きることは痛い。他人の痛みがわかってしまうんだから。人間の内側を暴露することの恐怖は、文学少女シリーズの竹田千愛にも通じるところがあるなぁ、と。これは星4つですね。好きです。こういうの。
敢えて言うと、実はいい人的に綺麗に纏める必要はなくて、暴言を吐いたままの暴力的な状態で終わった方が良かったかも。