野村美月「半熟作家と文学少女な編集者」

この巻で長かった文学少女シリーズも本当に最後!!番外編もナシ!!最後の最後なので、ゆっくりと味わいながら、大切に読もうと心がけていました。が、やっぱり面白いものは読むペースが進んでしまうなー。

今回は、大人になった文学元"少女"・遠子先輩が久々のメイン。最近は菜乃ちゃん関連が多かったから、遠子先輩の天然ボケっぷりを読んでニヤニヤする感覚は久しぶりでした。コノハくんが作家になるために、卒業式でお別れを告げた遠子先輩。そしてそのまま大学に進学して数年。ついに編集者としてコノハくんと再会することになったところで本編は終わり。今回は、その後のお話です。

軸は、編集者として働く遠子先輩と、担当作家の雀宮快斗くん。快斗くんは若干15歳で作家デビューして、いまや大人気。高身長・イケメンでモデルもこなす。そんな快斗くんは、自分の鼻が天狗のように伸びきっています。今回は、快斗くんの成長物語。

一冊の本を通して、作者と読者は繋がっているよ。読者は他人じゃないわ

こうアドバイスをする遠子先輩。最初、快斗くんは、全く意に介せず。自分の能力を過大評価。読者からのファンレターも無視。快斗くんの行動は傲慢、そのもの。

しかし、快斗くんは、遠子先輩と話をする中で徐々に角が取れてきます。

ライバル関係で似たもの同士の早川緋紗には、編集の言いなりではなくて、本当に自分が書きたいものを書くことの喜びと、そのための姿勢を。学校にいくことで、同世代との交流を。友情を実感。このとき(243頁)はひさびさに遠子先輩の文学少女姿を見れて嬉しかったなー。

緋紗ちゃんも、快斗くんも、売れっ子作家だけど、作家として勝負したい、と思っていることは同じ。だから、作家活動以外で評価されることを快く思わない。作家としての矜持。スカーレットのような、気品。だから、私は、ふたりのことを嫌いになれない。だって、面白いものを書こうとしていると苦しみ、もがく人間なんだから。私も村上龍作品は好きだけど、テレビでコメントしている村上龍は嫌いだ。同じ理由で石田衣良も。

快斗くんの、遠子先輩への恋。優しい年上のお姉さんへの憧れ。なんだか15歳男子のある時期をコミカルに描いているなー、と読んでいて思いました。快斗くんは、売れっ子作家で、自信も、お金もたくさんある。そこから出てくる勘違い行動が見ていて楽しくて。オレに振り向かせてやるっ!!冴えない男なんかとは勝負にならないっ!!という態度が空回りしています。

「あ、あの・・・・・っ、遠子さんって、彼氏とかいる?」

「い、・・・・一応」

このとき、快斗くんの落ち込み方は半端ないレベルです。

「忘れていたけど、オレ、童貞だったんだ!」

こんな感じで空回り。快斗くんは自尊心にあふれるキャラクターなんだけど、こんな感じでなかなか残念。読んでいても嫌いになれません。

快斗くんが遠子先輩への憧れを口にするときでは、遠子先輩は、いつもの天然ボケで、コノハくんへの想いを語ってしまいます。このときの遠子先輩の語り方が、本当に嬉しそう。きゃっきゃっしてノロケ話をしてしまいます。フォークダンスのシーンなんて恋する挿話集までよんでいないとわからのい人向けじゃないかー。遠子先輩には絶対的な《専業作家》として、コノハくんがいる。この二人の関係は、たとえ琴吹ななせでも入れなかった。もちろん、朝倉美羽でも、日坂菜乃ちゃんでも。

他方、快斗くんは憧れの対象本人からノロケ話を聞かされるんだから、たまったもんじゃないですよね。でも、恋の辛さをわかることが、作家としての成功の道だったり。ま、これは遠子先輩が仕組んだんじゃなくて、天然でやってしまったんだけどね。それも遠子先輩の可愛らしさですね。

快斗くんの原点。町の古い図書館でバイトしていた優しいお姉さん。本が好きな快斗くんの話を聞いてくれて。物語の面白さも語ってくれた、お姉さん。いやー、これは読んでいて誰なんだろうと「想像」していました。図書館だから、美羽?でも美羽だとこんな丁寧な喋り方しないよなー、竹田千愛ちゃんかなーって読んだいたんですが。ほら、女の人なんだから髪も伸ばすこともあるだろうし。で、結果は、、、、菜乃ちゃん。・・・まぁ、菜乃ちゃんって可能性も考えていなかったわけではなかったんだけど。ということは・・・・182-183頁で、菜乃ちゃんが語った、仲良しの友達が結婚するって話は、ひょっとして冬柴瞳さん?忍足センセとの結婚、本当におめでとう!!

ラストでまさかの菜乃ちゃん再登場。っていことは、快斗くんと菜乃ちゃんのカップルが成立すれば、文学少女シリーズの主要人物は全員相手ができた、ってことになりますね。コノハくんと遠子先輩。朝倉美羽と芥川くん。琴吹ななせと臣くん。竹田千愛ちゃんと、流人くん、そして、姫倉麻貴センパイ。個人的には、今作で登場したライバル作家スカーレット・緋砂ちゃんとカップルになっても良かったようだけど、やっぱり菜乃ちゃんの優しい、お姉さんっぽい雰囲気は遠子先輩と通ずるものがあるのかもしれないなー。文学少女"見習い"だったけど、もう"見習い"なんかじゃないよ。98頁や、182頁の、快斗くんの思い出の中の図書館のお姉さんの話を読んでいたときは、菜乃ちゃんが、高校生だったときに味わった贅沢な初恋は、やっぱり菜乃ちゃんの大切な思い出として、考え方の軸になっていたんだなー、と"想像"していました。

文学少女シリーズは、本当に思い入れのある作品ですね。本当に作品としてはこれで最後なんだなー。実は、いろんなことが溢れてきて、この巻の感想書くのがちょっと辛かったです。文学少女に登場する人物は魅力的で、彼らに会いたくて、なんども読み返しました。遠子先輩や菜乃ちゃんに触発されて、他の作品を読んだこともあります。私の中では、読書をしていても、各キャラクターと自分がおしゃべりしているような感覚でした。自分が、遠子先輩やコノハくんと親友のようなイメージ。だから、友人代表として、最後に言わせて欲しい。

心葉くん、遠子先輩、本当に結婚おめでとう!!そして、二人の生みの親である野村美月さんと竹岡美穂さん!!今まで本当にありがとうございました!!心葉くん、遠子先輩!ずっとお幸せに!!!