長岡マキ子「中の下! ランク.6 上の下から旅立つオレ」

中の下!  ランク5.上の下から旅立つオレ (富士見ファンタジア文庫)

中の下! ランク5.上の下から旅立つオレ (富士見ファンタジア文庫)

このシリーズもこれて最終巻!大団円のラストでしたね―。なーんかいい男になっているじゃないですか、成道くん。過去の自分がなぜ駄目だったのかを決算。

オレは、ナルシストだから友達がいなかったんじゃない。友達がいないから、自分のことが一番大事な子供時代のまま、ナルシストでいられたんだ。

247頁より。ぬあああーーー、自意識過剰な状態だった昔の自分が痛い。とにかく痛い。長岡さんは痛い男の子の過去をやさしく抉ってくれる。

なーんかなー、たしかに最初の頃のお話(1)(2)あたりとはだいぶ変わったよなー。成長といえば、一言でおわるんだけど。なんか、それたけで終わらせたくない。

全員からモテて当たり前、なぜオレがモテないんだ、と勘違いしていた頃。つまり、他人がどう思っているのかを自分の尺度でしか理解できなかった頃。でも友達ができて、他の尺度も受け入れることができて。うーん、成道くんのことを語っているのか、自分のことを語っているのか、区別できなくなってきたよ、これどうしよう。

登場人物たちも、なんだか成道といい関係を築いていて。黒川とは本音をぶつけ合う友情を。結局、成道が選ばなかった玲子さま、絽美とも。

やっぱり自分のことを好きな女の子に対して、友達でいようというなんて、相手にとっては残酷だよね。でも、言わないと関係がギクシャクしたまま。勇気があって正直に言った者だけが、より強い友情を得られる。ちゃんと告げた成道は凄いよ。玲子様には、尊敬しつつも近づきたい、と。絽美には、気が利かない自分ではずっと傷つけてしまうと自覚して。

雪菜とのシーンは、長岡さんも少女漫画とか読んでいたのかー、と思うくらいラブでコメっています。例えば、193頁。

好きだ。
オレが言いたいのは、要するにその一言だけなんだ。

・・・いやね、正直いうと、長岡さんって、サバサバしていそうで、甘ったるいラブコメなんかさっさと絶滅しろよ、といいそうなイメージだったんです(あくまで個人の感想です)。今回はラブコメ成分多めですなー。

ちなみに、自分が決断するとしたら、玲子サマですね。石田の選択には同意。今回、石田はあんまり絡まなかったけど、名脇役なんじゃないですか。成道とは話もあうし、バカもできる。

いやー、思わぬところで手にとったところから始まった、中の下シリーズですが、終わってくれて本当によかった。長さもちょうどいいし。これからも成道たちはずっと友達の関係でいられるんだろうなー。変態ラブコメだったのが、最後はさわやかラブコメ。良い読後感でした。長岡マキ子さん、ありがとうございましたっ