武者小路実篤「友情」

友情 (岩波文庫)

友情 (岩波文庫)

恋愛関係:野島→杉子/杉子→大宮
友情関係:野島⇔大宮

終結論:杉子と大宮が結婚。野島涙目。

杉子に恋する野島の暴走が痛いなー。

わたしはあなたを信じています。あなたは勝利を得る方です。あなたの誠実と、本気さは、あなたをどこまでも生長させます。さびしい時はわたしがついています。しっかり自分の信ずる道をお歩きなさい。あなたの道は遠く、あなたはばかな人からは軽蔑されます。だがあなたはあなたでなければならない使命をもっていらっしゃいます。[16頁]

これは、野島の妄想内での杉子の台詞。実際に杉子が言ったわけではない。実際に言われたら、、、嬉しいと同時に、肩にのしかかる責任の重さに逃避しちゃうかも。信じるって、いいことだけど、信じられる側にとっては、かなりの覚悟が必要だよね。こんな台詞を堂々と脳内で展開できる野島の原動力は、杉子への恋。杉子から頼られたい、尊敬されたいという思い。

貴き、貴き、彼女よ。
自分はあなたの夫に値する人間になります。
どうかそれまで、ほかの人と結婚しないでください。[41頁]

野島の台詞。野島は杉子を理想化しすぎているんだよなー。最後の杉子の手紙の中でもあるように、理想化した自分に恋されて迷惑(106頁)なんだけど、同じこと、杉子は、大宮にもしていない?

野島は杉子の一挙手一投足に、自分のことを好いているのではないかと勘違いしたり、嫌われたりしたのではないかと勘違いしたり。杉子のちょっとした反応で落ち込んだり、気分が高揚したり。
恋は盲目っていうけど、野島の様子は勘違いで、暴走気味で、かなり痛々しいよ*1

大宮が、リア充&金持ち&性格もいいという高スペック男過ぎて困る。これで大宮がすぐに友を裏切り、杉子に手を出すダメ人間だったら野島を応援したくなるんだけど、野島も、大宮も、どっちも性格がいいから、読む側としても、野島の立場になったり、大宮の立場になったりして悩みながら読んでしまう。。

友人のために、友人にふさわしい女性として杉子を見ようとする大宮。そして、両者の仲を実現しようとする。
だけど、最後は、友人を成長させるために、友人を裏切り、杉子と結婚する大宮。こんな友情もあるのかな、と。熱い想いを持つ二人だからこそできた最後の手紙のやりとり。

星4つ。

*1:ただし、自分も中学、高校、大学と、同じような勘違いで暴走した経験をしていることは棚に上げておく