桜庭一樹「推定少女」

推定少女 (ファミ通文庫)

推定少女 (ファミ通文庫)

まー、「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」を読み、面白かったので、購入してみた。「少女には向かない職業」を読んだのが去年の年末か年始?だったかな。そして、砂糖菓子の弾丸→推定少女と、ここ最近、桜庭一樹を読み漁っているなー。
角川から新装版も出ているけど、ここは敢えてファミ通文庫版で。

昨日の日記では、生と死の境目が小池真理子の特徴だと書いたけど、桜庭一樹の場合は、大人と子供の境界と、現実とあっちの世界の境界が交差する点に特徴があるのかな。縦軸を大人と子供、横軸を現実とあっちの世界として、4つの象限を作って、その中で、登場人物がどこに位置づけられるんだろうか、そして、どの象限からどの象限へと移動したんだろうかと考えながら読んでた。

「絵に描いたようなオヤジトークに絵に描いたような余裕のオトナ返し」(206頁)。もう、そんな年齢になってしまったけど、世の中的には社会の荒波に揉まれた生活とは若干遠い生活を送っているけど、自分にも、15歳の頃、大人になることを意識する時代があったはずなんだと。そして、それを過ぎ去ったら、過去は自覚してもいいけど、過去を引きずってはいけないんだ。
子供のことを何でも理解してあげる。あげる。あげる。この上から目線。気持ち悪い。ねっとりと来る視線。大人の作った線路の上を歩かされている感覚。自己決定と言いながら、そこに自己は一切存在しない。あるのは、大人の期待に応える自分だけ。そして、大人の期待に気付かないふりをして、歩く。そうすると、もっと大人は喜ぶ。
「名誉子供」(75-76頁、220頁)は、醜い存在なんだ。理解できなくてもいいじゃないか。別に異世界だと割り切って生活すれば。そっちのルールには介入すべきではないんだ。過去は過去として思い出に残しておくから美化されるのであって、それを再現しようとはできない。

リアルと言いながら、それは非現実なんだ。大人が作り上げた現実なんだ。これ、柳美里の小説を読んだ時に思った自分の気持ち悪さを見事に言い当てている。あれさー、大人が作り上げた現代的な小中学生像なんだよねー。オバさんが無理して制服を着ているみたいな、痛々しさを感じていたんだが、桜庭一樹を読んで、これは「名誉子供」というべきと言葉を取得できた。

さて、巣籠カナは何を撃って、撃って、撃ったのか。この時のカナは、まだ、子供世界の住人。でもオトナ世界一歩手前。かつ、カナたちは、あっちの世界、夢の世界の住人。非現実。撃つ相手は、夢の世界の人たち?カナの想像上で出てきた人たちは、現実の大人たち。もー、夢でも現実でも、なんでもいいけど、カナは戦っているんだ。どの時期でも。大人になっても。そして、今はイラつく存在の黒服エイリアンと。

自分が15歳の頃を思い出しても、良く勉強していた、という以外に実はあんまり記憶がない。何していたんだろう?そういえば、妄想ごっこをよくしていた。でも、それもいつの間にかやめちゃったな。境界をぱっと飛び越えることができる頃が自分にもあったと自覚。
今回も、文句なしで星5つ。