桜庭一樹「Girl's Guard君の歌は僕の歌」

最近の自分の中で流行中の桜庭一樹、第3弾。あとは、「赤×ピンク」もあるんだよなー。まだ読んでいないけど。

じーちゃん、かっこぇぇ!!

生娘の技は直線。男を知れば技に趣が出る。マリ、粋な武道家になれ。42頁。237頁。

もう一つ、気に入った名言。これは楼崎刑事。

人は歌うし踊るし恋をする生き物だ。それは愚かなことだが法律では罰せられない。

読み易さでは、今まで桜庭一樹を読んだ中で一番だったな〜。どちらかというと、桜庭一樹の作風というべきだが、作品のテーマを、一言、一つのフレーズに集約させる傾向があると思う。例えば、バトルモード、砂糖菓子の弾丸、みたいな感じ。この手法には良いところもあるんだけど、意味を色々詰め込み過ぎて良く分からなくなっている場合もある*1

ストーリーについて。
刑事・楼崎と、刑事のお友達の土岐。土岐の妹がマリ。マリの親友が雪野。マリと雪野の二人でガールズガード。どんな事件もゴツン!と解決!!カップリングは、マリと楼崎、土岐と雪野。
もー、マリと楼崎のお互いの距離が薄皮一枚!これ、続いていたら二人の間にも進展があったんだろうなー。マリ&楼崎のことを土岐&雪野はからかっているけど、お前らだっておんなじレベルだろー。あ、マリはまだ生娘なので*2、日本刀を持ったラスボスとの勝負には勝てません。勝てるのは、粋な武道家のじーちゃんだけ。
206頁までは、推理小説風味の日常。日常の中で、ラストにつながる事実を積み重ねていく。207頁からは怒涛の展開。これは一気に読めた。最後のあたりを読んでいて、JRが駅に着いたんだけど、駅に降りてからも、改札に行かずに読んでしまった。読了してから、改札を通る。歩いて自宅に帰る間に、感想を思い起こしていた。

マリのことを、赤毛の天使と呼ぶ楼崎。じゃじゃ馬で直線的なマリ。対する楼崎は飄々とした、ちょっと冷笑を好む性格。じーちゃんも言っているけど、正反対な分、適度に相性もあうのかもな。これくらいの距離感、親密度だと、気兼ねしなくて済みそう。マリの反応と楼崎のテキトーな応答。でも、楼崎はときどき酔っ払って告白紛いの発言をする。あー、その後で自問自答する楼崎を想像するだけで、ちょっとニヤってくる。「何いっていんだろ、俺。ガキ相手に・・・親友の妹に・・・」って感じかなー。いいお兄ちゃんになりそうだな。マリの実兄の土岐が完璧超人エリートな分、マリを適度にからかいつつも、心配するのは楼崎だけなのかもな。しかも身を助ける。実兄とは別なタイプのお兄ちゃんが恋人かー。いい組み合わせです。あと、現実社会には結構ありそうな組み合わせ。

この小説が残念なところは、続編がないこと。あんまり人気なかったのかなー。楼崎がどうなるのか、扇子の種類は何種類あるのか、じーちゃんがどれだけ強いのか、いろいろ読んでみたいなー。

桜庭一樹の小説の雰囲気は、その場に自分がいそうな感じを想像できるところ。そして、会話のやりとりが自然体。あ、小説という人工物なのに、自然体っていうのはなんか変だよな。うん、これは、会話のテンポが良いところ、だ。サクサク読めて、推理小説風味なドキドキなストーリー。ラブでコメっているよ!キャラもぶっ飛んでいるよ!と、ライトなノベルとして、十分楽しめた。ということで、星4つ。

*1:もっとも、小説は論文じゃないので、厳密な言葉の定義を必要としない。だから、概念が厳密な意味で用いられていないというのは野暮な批判かもしれない。

*2:雪野もまだ生娘