河野裕「サクラダリセット」+みかづき紅月ヤンデレ補足

乙一の帯コメントに惹かれて買ってみたが、絶賛しすぎだろうw
各種いろんなところに伏線が張ってあって、最後で綺麗につながる。小説の内容を一言で言うと、、、、やり直しができる崩し将棋みたい。
最初の猫を助ける依頼に端を発する謎が進行しながら進むんだけど、あーまたリセットかー、とおもうから、わくわく、どきどき、じゃない。読み手も、主人公のケイと一緒に、冷静に事態の進行を眺める。
特に最後の村瀬との戦闘シーンでは全く燃えない。こんなに燃えないラストのバトルって、逆に凄い。村瀬を悔い改めるやり方は意外だったけど、燃えない。だけど、燃えないバトルというのは、多分、作者も狙っているだろうから、マイナス評価ではない。
主人公のケイは、米澤穂信の小市民シリーズ(春期限定いちごタルトなど)を彷彿させる、ちょっとした上から目線を厭味ったらしく感じてしまうのと同時に、作者の術中に嵌ってしまっている自分を自覚する。
この点については、いろいろ感想サイト回っていたら、こんな記述を発見したので、引用しておきます。

思考レベルがガキのまま達観してしまっている、自己憐憫と陶酔がスパーク状態の主人公の存在自体もう勘弁してくれという感じ

多分、自分が思っているところと近いです。で、私は作者はわざと狙っていると思っています。
結局マクガフィンは何だったんだろう・・・?シリーズ化するかもしれないので、続編で、ということかな。今作はまぁまぁ面白かったけど、次回作買うかどうかは・・・まだわからんな。
内容は大絶賛!と言うほどではないが、結構好きだなー。特に、作者の文体は好き。ケイの思索というか、過去の痛みが、冷静に伝わってくる文体。自分の肌に合うなー。中身のない話でも、なにかの役には立つんです。総合で星4つ!
あと、多分作者は、ジョジョの奇妙な冒険の4部が好きだと思う。


あと、以前書いた日記に補足。
私は、この日記の中で、みかづき紅月さんの「僕とヤンデレの7つの約束」を楽しむことができなかった、と書きました。これについて、いろいろ考えたので、補足します。
楽しめなかった理由を、自分なりに考えたところ、私はこの小説を楽しむ能力が欠如していたのではないか、と思います。私はこの小説を、美少女文庫作家のみかづき紅月が書いた小説として楽しもうとしました。
私は声優オタクではないので、ドラマCD1枚3000円×2=6000円払ってまで買おうとは思いません。まず、この時点で、楽しむための前提知識を、私は共有できません。これは、逆に言うと、「能登まみこー!!!」と叫ぶ人なら、ドラマCDを買うことで楽しむための前提を共有できると思います。私は、CD2枚6000円を払ってまで、楽しもうとする意欲がない。だから、楽しめない。

上記の記述にも関連するが、私は結局のところ、小説の前提を共有できなかった。お笑いツンデレ、野良ツンデレなんて言われても、は?だし。月と勘奈の違いもよく分からなかった。クールツンデレと優等生ツンデレって、何?印象に残ったのは、喋りに特徴がある、妹ツンデレとお嬢様ツンデレだけ。これも、キワモノゆえに印象に残っただけ。
結局、疑問符ばかり。最初の登場人物一覧を読み返しながら、いちいち確認。でも、これって、小説として読むと、ダメ。だって、小説って、こいつはこういう奴だ!って印象付けないと読者の記憶に残らないから。脇役クラスならまだしも、主人公クラスの人間(最初のイラスト付きの登場人物紹介で3番目、4番目に大きい扱いを受けている人たち)までいちいち登場人物一覧で確認させるような印象付けしかさせないのは、ちょっと・・・??これも、前提知識を共有できない、あるいは6000円払ってまで共有しようとする意欲がない私だからこその問題。6000円払って、共有しようとする人なら、多分、楽しめるんじゃないか?
また、作品の内容だが、これは以前の日記でも書いたように、小説媒体の特徴を生かしていない。そして、会話に頼りすぎ。小説を読んでいるんじゃなくて、アニメ脚本、劇の脚本を読んでいる感じ。
だからこそ、ところどころで面白いんだけど・・・・と、前回の評価に落ち着くわけです。このエントリを書くために、もう一度読み返しているんだから、作者にとっては、ある意味熱心な読者だと思います。確かに否定的評価だと、不愉快かもしれないが、正規の値段で買った作品を読んでいるということで宥恕願います。