野村美月「文学少女見習いの、傷心」DVD付特装版

文学少女(見習い)シリーズ第2作目、「文学少女見習いの、傷心」読了。私が購入したのはDVD付です。DVDはこれから見ますー。さて。思いっきりネタばれします!!読む人は注意してくださいねー









ラストで二重の驚愕。

菜乃ちゃんが烏丸さんだと思っていたのが、実は、、、臣くんだったなんて!臣くん再登場!!!
じゃあ、臣くんは、烏丸さんの振りをしていたわけね。でも、ところどころで、天使の歌声を持つ孤高の天才として、本来の自分の心から発した台詞を吐いている。例えば、153頁は、臣くん→ななせ、だよねぇ??
菜乃ちゃんは、臣だと知らない。そして、「だから、つまりあなたは、人間なんだよっ」と言い放つ(202頁)。うわー、臣くんにとって、これは二重にキツイ!でも臣くんも歌い始めるきっかけのきっかけ、くらいにはなったのかな。菜乃ちゃんは不思議。何も知らない。だけど、その言葉には通じる力を持っているヒロイン。

そして、もう一つ。ここまで読んでやられたーと思ったのに。瞳ちゃん!!何やっているんですか?!
そしてコノハーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!お前が二回も別な女とキスしたことは、俺が遠子先輩に伝えてやるっ!!!!!!!

この浮気者!!遠く北の地で、遠子先輩は待っているんだよ?くあぁぁあああああああああ!!!!ななせちゃんでもできなかったのに。キスを二人も体験しやがって!!!!!!!!!!!!!


はぁ・・・・はぁ・・・・
さて、絶叫したところで、本編感想行きますかっ!



ハッピーエンドを信じる菜乃ちゃん。でも、菜乃ちゃんの見方は、夢見がちなウォルトン

きみは、いつも自分が望むようにしか物語を見ない。(239頁)

真実は怖いもの。真実を見つめなければ。表だけが世界ではない。世界は、二重、三重の構造にある。

そして、真実とは。怪物は人間が作り出すもの。怪物に恐怖する人間自身が怪物を作り出すもの。幸せの絶頂にあるときに感じる、過去への罪悪感。

婚礼の日に会いに行くぞ

人間が、死体を寄せ集めて作り出した異行の怪物。追い詰められる十望先輩。鴉への恐怖。過去の自分に対する後悔、懺悔が徐々に怪物となっていく。

真実を見るとき、人は傷つくかもしれない。
・怪物の正体は、十望先輩自身だった。
・菜乃ちゃんにとって、怪物を人間だといって仲良くしようとしたのに、理解出来ないものとして、やはり拒絶してしまった。「あなた、最高にウザイ」(259頁)。これほど辛い台詞はないかもしれない。自分も拒絶してしまうという真実。
・ななせにとって、作家としての門をくぐり、変わりゆくコノハを見つめることは、怖いことかもしれない。


それでも。


文学少女(見習い)は、物語の続きを信じている。

怖がって逃げてても、斧で頭をかち割れて血まみれ死体になるだけです!踏みとどまって、恐怖と向き合った人だけが、生き残ってハッピーエンドになるんです!(347頁)

菜乃ちゃんは、文学少女見習いの、初恋でも、似たような締めの台詞を吐き出したけど、今回はちょっと違う。前回は、ストレートであるがゆえの強さ。相手を励ます強さ。

今回は、菜乃ちゃんの前向きな姿勢は同じ。だけど、見たくないもの、自分がわからないもの、自分が分からない故に恐怖を覚えるものに向きあって、それを見ようとした上での強さ。勇気を持って恐怖感に向き合った人こそが、幸せをつかむ。

わからないものを切り捨てたり、逃げたりするのではなく、知りたい、近づきたい。(369頁)

だから、先へ進もうとする。逃げない。どんなに辛くても、人に向きあおうとする。菜乃ちゃんの信じる力は、一旦怪物を拒絶してしまった自分さえも克服するんだ。
菜乃ちゃんはななせに言い放った台詞が重なる。諦めれば傷つかなくて良いから楽。そして、ななせの辛さには痛いほど共感している。諦めると楽だとわかっている。だけど、諦めが悪いとして先に進まないと!
劇の中で言い放つ、菜乃ちゃんの最後の台詞。これは、菜乃ちゃん自身が望む、文学少女シリーズに登場する人々の進路でもある。十望先輩や烏丸さんだけではなく、竹田千愛ちゃん、朝倉美羽、臣くんなどなど。

ハッピーエンドを信じる菜乃ちゃん。菜乃ちゃんの前向きな姿勢は読んでいて、清々しい。コノハくんの指導もあって、一つ一つ理解していった言葉には、力がある。実は菜乃ちゃんも小説家に向いているんじゃないの?青春ビターテイスト系の。

さて。本編には朝倉美羽も竹田千愛も登場。何を見ても共感できないできない、人間失格の千愛ちゃんは、「道化を演じているホントウの自分」が恥ずかしくて、それを見せれなくて、だから、ヒロくんには理解できかったと自覚。すげー、菜乃ちゃんの言葉は、千愛ちゃんにも届くのかー。本当にタフな子。

さてさて。続きが気になる終わり方の「文学少女見習いの、傷心」。当然星5つですよ!!