大樹連司「ほうかごのロケッティア」

ほうかごのロケッティア (ガガガ文庫)

ほうかごのロケッティア (ガガガ文庫)


アニメイトでふらふらまわっているときに、ふと気になって購入した一品。これ、意外とツボにくる!

主人公・褐葉くん。中学生時代は、オタクであり、熱狂的なクドリャフカのファン。当然、中学生時代は、スクールカースト最底辺。いじめられっ子。

元クドリャクフカで、ヲタども(褐葉くんなど)の執拗なファンによって、引退に追い込まれた・久遠かぐや。同じ高校へ転校してくる。電波系超絶美少女。

で、ロケット部の三人 + 翠、じいさん、先生。

なんかなー、前半の、褐葉くん視点の、元いじめられっ子の視点から見た学級経営、クラスの人間関係の操作が、自分なりにも理解できる。元いじめられっこの立場も含めて。

でも、そんな、褐葉くんも、学級経営に飽きてしまう(168頁)。そして、実は隠れオタであったことがバレてしまい、一気にスクールカースト最底辺へ転落。高校でも、やっていることは、変わらない。ポジションの奪い合い。どの立場に自分が属するようになったか、だけ。

これ、わかるなー。大学に入って最初に思ったことは、ひとりの気楽さ。小学校、中学校の時に感じた、クラスメイトという空間の狭さ。特に、私は成績が良かったから、意味が良く分からない、やっかみにあっていたこともしょっちゅうだったし。高校に入ってからは多少ましになったけど、あくまで延長線上にあるだけ。でも、大学は別世界。ひとりで学食で昼飯食べていてもなんにも思われない。ひとりで行動していても、問題なし。一日に喋ったのは、「あ、いま、3円出すのでちょっとまってて下さい」だけ、というのもよくあること。誰かと接触しないので、時間は自由に使える。そして、その時間は、趣味や勉強に打ち込める。

で、この小説の主人公の褐葉くんの場合、自分なりに打ち込めるものとしてのロケット作り。最初は、翠に目的を与えられて開始、だったけど、どんどんのめり込む。でも、今回はひとりじゃない。同志がいる。同志たちは、朝晩寝泊まりし、落ち武者のように活動。最後は落ち武者からゾンビへランク・アップ。気が狂ったような、いや、気が狂いながら、ロケット作りに励む。むしろ、そっちの方が、自分の、自分自身のために活動している分だけ、中学生時代に近い。

テンポの良い文体で、ぐんぐん読ませる感じ。翠とかぐやの言い争いのところあたりからは、一気に読んでしまった。最後は、ロケットを打ち上げ成功→成長して大人になった、褐葉くん+かぐやEND。プロポーズらしきもの?で締め。

ヒロインは、かぐやと翠。対照的な二人。でも、傲慢なところは同じかも。どっちも、褐葉くんの潜在能力を引き出す点にかけては天下一品かなー。かぐやの、自分の為に一生懸命になってくれる男の人を好きになって何が悪いの?という態度は、むしろ好感が持てる。

褐葉くんは、自分の能力を過小評価しているよ。何をやらせても7割くらいは出来る人って、わりとすごいよ。自分の周りにも思いつく人はいるんですが、これはこれでで、結構貴重な存在ですよ。で、自分の周りをなぜか誘導する力。

うん、最初は、ふと目に止まって購入したけど、これは買ってよかった小説。星5つで!

追記

かつて電波だった主人公が、電波な美少女と出会い、ロケット作りにのめりこんでいく青春恋愛物。

はてなめぐっている間に見つけた感想。
http://d.hatena.ne.jp/kazenotori/20100124
あー、なるほどなあ、と思います。