室生犀星「或る少女の死まで」

或る少女の死まで 他二篇 (岩波文庫)

或る少女の死まで 他二篇 (岩波文庫)

石川県出身の方が勧めていた一冊。妙に面白そうだったので買ってみました。「幼年時代」、「性に目覚める頃」、「或る少女の死まで」の三編です。

なんか既視感があるなーと思ったら、中勘助銀の匙だ。

青年らしい、自分の作品が認められたことによって有頂天、天狗になっている様子が描かれている。友人の死がなー。すこしずつ弱くなっていく様は見ていて惨めになるし、友人の立場から見ても、今までは調子が良かった分だけ、惨めだよなー。自分自身が弱くなる感じが手にとるようにわかるんだもん。

最初、飲み屋の少女が死ぬかと思ったら、或る少女は、下宿先の女の子なのね。ま、飲み屋の少女も結局死ぬっぽいんだけどさ。自分たちの、意地の張りと、その裏返しの世間に対する申し訳なさ。良い作品を出して、いつか世に出てやるという意地。でも、金がない。心も折れそう。欲求不満から起こしてしまった、暴行事件。それが心理的にあとを引いてしまう。それとは対照的な、少女の純真なさま。

自分の心の汚さ、充満する鬱屈感を暴露する小説ですねー。認められない、という欲求不満だよなー。これも、よくわかる。
ふるさとへ帰るって、つまりお寺に帰るわけだよね?お地蔵さんや、お姉さんにも会えるということか。