読み返し・ゼロの使い魔8〜11巻

最近、ずっと続いている読み返しシリーズ。2月前半からずっとゼロの使い魔だな。お話としては、ティファニアに生き返らせてもらったサイトを探しに行く→母親と一緒に幽閉されたタバサ救出→ティファニアを迎えに、もう一度アルビオンへという展開。

このあたりのテーマは、勇気と故郷。

ガンダールヴの印があるから、勇気を持てるのか?ガンダールヴだから、勇者なのか?違う。サイトは、単騎で7万に突撃するときも、怖さを感じ取っている。恐怖に怯えている。でも、好きな女の子を守る、その一心で、サイトは突撃している。そのときもサイトは力を持ってしまったんだからと告白する。日本にいるときは、ただのありふれた高校生だったんだけど、ハルケギニアでは勇者になってしまったんだから。一般高校生の平賀才人としては確かに7万の軍隊も、タバサを匿っているガリア軍withエルフも怖いけど、勇者になってしまったんだから、勇気を出さなければならない。

「イーヴァルディの勇者」の正確な意味は、「イーヴァルディの中にある勇気」と言う意味(少なくともタバサはそう理解している)。イーヴァルディたるサイトだってただの人。正直に言うと、怖い時もある。そりゃ、確かにルイズの虚無の詠唱を聞いていると、少しくらいは勇気がわくけど、そんなもん。強い力を持ってしまったんだから、「怖い」は言い訳にならない。貴族として、突き通さなければならない筋があるときは、突き通さなければならなない。今回は、友達を助ける。ただ、それだけ。

10巻225-226頁。ルイズに怖くないの?と言われた、サイトの反応を読んでいると、フツーの高校生らしい反応で、ああー分かるわかると共感できる。好きだから守る。力があるから守る。そうしなければならない。すらっと、緊急の時に言えることは、却って本音だと思います。

それから、もうひとつの軸は故郷かな。フツーの高校生だったサイト。であるならば、普通の日常がかつてのサイトにはあったわけで、母親や友達、幼なじみなどがいたはず。帰りたくないの?とルイズに問われるサイトは、ここでできることをしてからと答える。ガンダールヴとしての力を持ってしまったサイトを、ハルケギニアは、理由はわからないけど必要としている。ここでできることをやってから故郷を探す。

アルビオンのウェストウッドで、ティファニアの音楽を聞きながら、故郷をコルベールに焼かれたアニエスに、デルフが言った言葉が蘇える。

「なに、故郷ってのは、要するに心のよりどころさ。新しい故郷を、みつけりゃいいんだ」(8巻290頁)

ティファニアにとっての心の拠り所は、母の故郷たるサハラ。
アニエスの故郷は、もう焼かれて消失してしまったけど、新しい拠り所を見つければ良いとデルフの言葉。この二人というか一人と一房の剣は、良い組み合わせだと思っていたんだけどなぁぁ。もう見れないのか・・・・

サイトは、明らかに、ハルケギニアでの拠り所を見つけ始めている。もちろん、それはルイズ・フランソワーズ・ル・ヴランドール・ラ・ヴァリエールという超絶美少女でもあるんだけど、それだけじゃなくて、騎士隊の連中(含むギーシュ)とも仲良くなっているし、シエスタからも全力で慕われている。それは、もちろんガンダールヴとしての力のお陰もあるけど、サイトって、なんか性格も良くて、偉ぶったところも、自分の勲功を鼻にかけるところもなく、信頼できる好漢。良い仲間に恵まれている。

だから、サイトは、たぶん、日本かハルケギニアかという二択を迫られたら、たぶんハルケギニアを故郷として選択すると思う。まー、この辺は、13巻以降のテーマだったりするんだけど。サイトの母の言。「友達との約束」。読者としては、母親は、サイトのことを、わかって欲しいと思う。むしろ、サイトの母親だからこそ。確かに、母親としては、突然失踪したサイトを心配し、悲しんでいると思う。だけど、異世界でサイトは活躍しているし、そっちでの足場を作ろうとしている。すでに小さい時から半ば自然発生的に形成されてきた故郷*1とは違って、自分の力で作り出した足場・故郷。サイトにとって、ハルケギニアはそういう地。のほほんと過ごしてきた日本ではなく、文字通り血を流しながら築き上げてきた足場。だからこそ、余計に愛着があるだろうし、サイトもいつかは親離れをしなければならないときもあるだろう。たぶん、日本には戻れない。確かに、辛いけど、新しい故郷・ハルケギニアというかルイズと一緒に、新しい故郷で暮らさないと。そして、きっとサイトの親も、自分がどうせ先に死ぬんだから、母親だけを頼りにされても無理だから、新しい故郷たるルイズと幸せな生活を過ごすことを理解するだろう。というか、理解して欲しい。私は、サイトの母親に、「平賀才人は、ヒラガ・サイトとなって、異世界で死ぬ気で頑張っていて、可愛い女の子とも両思いです。あなたの子育ては、成功しています」と、告げてあげたい。それなら、きっとサイトの母親も納得するのに。

むー、ゼロの使い魔。読み返しシリーズも一旦小休止。これからしばらくは別なものを読む予定。でも読み返しシリーズも新たな発見ができて、面白いので今後も続けます。次は13巻あたりから読み返しますかー。いつになるのかわからないけど。

*1:生まれは選択出来ないから、すでに小さいときから特定の文化に属していることを認めなければならないと言い放ったのは、現代の先住民族研究の第一人者であるウィル・キムリッカである。