紅玉いづき「ガーデン・ロスト」


ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)

ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)

私とほぼ同じ世代なので、舞台のイメージを共有しやすい。

登場人物それぞれが作者の一部であり、作者が高校時代に過ごした人、すなわち、あとがきに書いてあるモチーフなんだなー、と。読んだ感想を一言でまとめると、「互いにわかりあえていないけど、わかりあえている」に尽きる。自分がこの小説の帯にキャッチコピーを作るなら、こんな感じで書くかな〜。

小説本文の最後の一言。

それでも、誰かと。
・・・あなたと、手を、つなぎたかった。

これ、読んでいて最初は、いまいち腑に落ちなかった。だって、これ、シバが卒業式に出るという現在進行形で物語が進んでいるときなのに。なんで突然過去形なの?、と。

でも、あとがきを読むと納得。

今この時の、私の全力で書き切った『彼女達』です。

このあとがきを読むと、やっぱり最後の台詞は、作者自身の、高校時代の過去への反省なのかなー。作者が小説という箱庭を作って、自分の高校時代を、自分の反省に基づいて追体験しているイメージ。お人形遊びの発展形態みたいな感じ。

こういってはなんですが、自分も高校時代は、いい意味でも、悪い意味でも、思い出の地であり、自分の原形を創り出した時期でもあると思っています。楽しかったし、辛かった。でも、満足していた。中学までの友達とは縁遠いけど、高校のときの友達とは今でも呑んだりしています。久しぶりに会う人でも、なにげなくずっと前から一緒にいる気分でダラダラしたり。
作者の紅玉いづきさんもきっと同じなんだろうなー。放送室に充填している空気に思い出が詰まっているからこそ、こういう小説ができるんだと思う。ああああーーーーー、私は、紅玉いづきさんと話がしてみたい。紅玉さんが高校時代にどんな生活をしていたのか、行きつけの居酒屋のカウンターで、ちょっと酔わせて話してみたい。今作のような、自分の人生の一部を切り取った小説だと、作者の内面や思い出が、気になる。もっとお話したい、と思ってしまう。なかなか叶わない願いなんだけど。

メディアワークス文庫は、おそらく想定している読者、販売対象が自分の世代で、直撃ですよー。うーん、いわゆるラノベに対する物足りなさを満足させる小説。しかも、仕事で忙しいから、単巻で完結する構造。他のメディアワークス文庫の作品にも手を出してみようかなー、販売戦略に乗せられてみようかなーと思います。