清水マリコ「侵略する少女と嘘の庭」

侵略する少女と嘘の庭(MF文庫ダ・ヴィンチ)

侵略する少女と嘘の庭(MF文庫ダ・ヴィンチ)

本屋でぱらぱらと図書巡りをしている時に新刊コーナーでふと手にとった一冊。読んだものは新装版の方です。

侵略する少女と嘘の庭 (MF文庫J)

侵略する少女と嘘の庭 (MF文庫J)

こっちのときは手にとったこともなかった、と思う。

さて、感想書きます。

「お前ってさ」
「性格悪いどころかいいやつすぎて、誤解されるやつなんじゃないか」

「サタンは神の国を負われた堕天使だから。さみしくて、イエスが懐かしいの」(186頁)

結局、この小説は、中山りあという悪魔の謎が瓦解ていく過程に尽きる。小さい頃のトラウマ。狂信者の母であっても、認められたいという願い。悪魔たるりあだとしても、孤独が辛い。誰かを求める。偶然とはいえ、秘密を隠したときに現れた、「運命の相手」。それを信じたくなる気持ちは、唯や琴美以上かもしれない。中学生くらいの女の子は、「運命の相手」を見つける秘密のおまじないみたいなもんを信じたくなる年なんだから。

その一方で、中山りあが及ぼした影響は地味に大きい。中山りあは、小さい頃の虐待、トラウマを克服できた。そして、主人公の幼なじみたちは、幼なじみという呪縛から解放された。小さい頃の思い出は、過去のものとして縛られることもなくなったし、小さい頃のカップリングは中学生になった現在を縛るものでもなくなった。中山りあが辛い過去を克服したならば、主人公と幼馴染たちは、思い出も過去のものとなってしまった、ということになる。それぞれ、自分の独自の世界を気付き始めるきっかけが、結局のところ、中山りあだった、に過ぎない。

うー、自分に置き換えると、こういう経験がしなかったからなぁ〜。私の場合、幼なじみ=近所に住んでいる同年代の親戚だったし。血は水よりも濃し。その内の人りとは、小、中、高、大学まで一緒でした。さすがに大学は学部が違ったけど。私の場合、特殊な環境で育ったので、こういう幼なじみ4人組みたいなシチュエーションに憧れたりもするんだよなぁ〜

小説の内容自体は非常に面白い。私の場合、行き帰りのJRの中で読むので、だいたい4〜5日で一冊のペースなのに、一気に読んでしまった。