川原礫「アクセルワールド」

以前、青橋作品でイラストを担当したHIMA氏つながりで購入してみた。普通は逆なんだろうけど。

アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)

アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)

とりあえず、川上稔がこの本が好きだということは理解した。そして、巻末についているアクセルワールドカワカミエディションと自作イラスト。イラストの雰囲気が、90年代の美少女もの。テレビアニメ版のミサトさんをイメージしてくれればわかるかも。

これがすべてを表している。要は古い、と。

率直な感想を言えば、

  • 話はごくごく普通。スクールカースト最底辺の卑屈な主人公が、特殊能力を得て、加速世界で勝利を目指す。とりあえずの敵が幼馴染。今回のボスの正体は謎なんですけど、バレバレですよねー。で、最後は、戦って和解。幼馴染みが、不良漫画に出てくる「お前みたいな社会的ゴミはさっさと消えろ!俺たちエリートが日本を支配するんだ!!」と罵る天才型エリートの典型例で、既視感ありあり。
  • 設定凝りすぎてイメージが広がりにくい。ただ、これはアニメになると話は別。富士見ファンタジアみたいに、映像化を見越した作品は評価が高いと審査項目に書いている場合もあるからなぁ。

SFとかファンタジーって、難解な専門用語を使って、唐突に世界を説明してしまうから、あんまり好きではない。これはToLOVEる最終巻の矢吹・長谷見対談の中であったように、なんでも「卍解!」or「だってばよ!!」or「死ぬ気の炎」の一言で、ぱっと説明できる世界の方が楽なんですよ。でも、ある程度続いている作品なら別として、いきなり「加速」世界ですよ?時間が止まっているし、首のところによくわかんない端末がある近未来だし、ブレインバーストだし・・。で、なんでアクセルワールドをインストールすると、グローバルネットワークの接続が急に変わるの?通常のアプリはなんで使えないの?敵はなんで普通にアプリを使っているの?と疑問点ばかり。なんで主人公のハルユキは通常アプリが使えないことに不便を感じていないの?うーん、1巻からこれではねぇ・・・・。ブレインバースト時の加速世界や、シルバークロウの緊迫したバトルシーンはアニメで良い雰囲気になりそうだと思うから、メディアミックス化を見越した上での《大賞》という評価だと思うんだけど。

いい感じに新人らしい気負いを抜けさせて、1巻の内容を2冊くらいに分けて、すこしずつ展開させればそれなりに読みやすいんだけどなぁ。この典型は、ゼロの使い魔。デビュー作じゃないだけ、「オレの世界を詰め込むぜ!」という気負いが良い感じに抜けていると思う。だからヤマグチノボルのヒット作になったんだと思う。

総合評価だと、凡百のラノベというところ。続きを買うかどうかは不明。星3つで