橋本紡「半分の月がのぼる空 4巻」
半分の月がのぼる空〈4〉 grabbing at the half-moon (電撃文庫)
- 作者: 橋本紡,山本ケイジ
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2005/02/01
- メディア: 文庫
- 購入: 5人 クリック: 22回
- この商品を含むブログ (129件) を見る
この巻は、夏目が主人公か。野心家で努力家の夏目は、回避するスキルがない。でも小夜子にはなぜかある。猫力?相手と雑談して、油断させる力。心を開く力。
「ろくに笑わないまま死ぬのと、今みたいに笑いながら死ぬのと、どっちが幸せだと思う?」
「残される方はどうなるんだよ?」
「耐えるんだね」
自分の幸せよりも、相手の幸せ。相手の余生を満足させること。相手を死ぬ間際まで、本当に最後の最後まで、楽しませること。
昨日の日記では、学校へつれていくことは、上っ面だけの思い出作りみたい、と書いた。でも、それでもいいのかもしれない。里香が楽しいなら。
夏目って、裕一の経験をすべて体験しているんだよな。裕一にとっては、全部の人生の先輩。最愛の相手を、同じ病気でなくす。長期間、病気の発作に怯えなければならない。小康状態を信頼できない。その不安感だけではない。裕一は、浮気をしようとしたこと(寸止めだったけど)もある。夏目は実際に看護婦と「安っぽい」情事を実現。
今の夏目は、耐えている。残された方だけど、耐えている。それがときどき出てくる。例えば、酔っ払ったときに。裕一くんも、大人になったときに、里香との接点は、思い出に昇華できないだろう。里香の死は、辛い悩みになってしまうかも。
里香のために、いろんなものを諦めなければならないことは、もう織り込み済み。覚悟の上。そうじゃないと、病院の窓から侵入なんて出来ないよ。友達の助けもあるけどさ。読んでいて、ほんとうに良い友達を持ったなー、と。里香だけじゃなくて、友達のことも、思い出に刻み込めよ。死ぬまで忘れない覚悟を持てよ、と。
学生時代の夏目の生き方が自分とシンクロしすぎて、どうしようもなくなる*1。相手と打ち解けて、殻を破って、一見遠回りだけど、信頼を得て、警戒心を解いてから目的を達成する小夜子のような生き方をしたい。
*1:あ、私は、夏目みたいにモテなかったですけどねっ!!