橋本紡「半分の月がのぼる空 6巻」

えっ、これで本編終わり?

あとがきまで読んで、衝撃を受けました。・・・確かに、前回も書いたけど、この小説って、起伏がなくて、物語が小さい。それは悪い意味ではなくて、作者が1巻のはじめに宣言したとおりのこと。だから、私は批判するつもりはない。

この巻は、裕一が里香の将来を受け入れいることを覚悟した話の続き。里香との結婚まで覚悟している。そして、里香を受け入れることで、自分の将来が狭まることを覚悟している。それでも、自分の将来を奪う相手であっても、将来以上に大切なものだと、18歳なりに自覚している。

夏目は、里香が死んだ後の世界を見ている。里香はいずれ死ぬ。そのことは、裕一も分かっているつもり。あくまで、"つもり"だけど。その裕一に対して、夏目の言葉。

「最長の10年までいったとしてたら、おまえはそのとき28だ。何かを一から始めるには遅すぎる。だが自分の人生を諦めるには早過ぎる。中途半端もいいところだ。そこから、なにもかも失ったところからお前は生きなおさなきゃいけなくなる。いいか、里香のいない世界を、お前はたった一人で生きていかなきゃいけないんだ」

「だから、わからないってことをわかっておけ。それくらいしかできることはねぇ。あと、里香がいなくなったときのことを考えて、少しは準備しておけ。27とか8だ。それくらいから道を選び直せるようにしておけ。おまえの人生のために」

小夜子を失った夏目なりのアドバイス。裕一に現実を覚悟させる。でも、夏目は人生を生き直すことを選択した。やっぱり、裕一が、必死で壁伝いに里香に会いに行ったことは、里香に会いたいと思ったことは、伝わったと思う。これ、夏目の裕一に対するアドバイスでもあるし、過去の夏目自身に対するアドバイス。夏目なりの感謝かな。

こだわることって大事だけど、死、もう戻れないことに拘って今を生きることが辛くなったら、死んだ人も迷惑だよね。

この物語は、本当に小さな日常。本編はこれで終わり。7、8巻は短編集らしい。実はまだまだ続くと思っていました。物語に続きがないときは、続きを想像してみよう、と遠子先輩なら言うはず。だから、自分なりに、裕一の10年後の世界を想像してしまう。辛いけど、そこを克服した先には、もう一度幸せを掴むチャンスがあるかもしれない。こういうと里香派は傷つくかもしれないが、裕一が28歳くらいだったら、もう一度恋愛するチャンスも。それは、悪いことではないんじゃないかなー。