辰川光彦「官能小説を書く女の子はキライですか?」

官能小説を書く女の子はキライですか? (電撃文庫)

官能小説を書く女の子はキライですか? (電撃文庫)

タイトルに惹かれてそのままレジへ持っていった一冊。美少女文庫二次元ドリーム文庫読者の私だったらメタ的な意味で楽しめるかなー、と思っていました。


・・・・つまんねぇ。


だって、期待するだろ?タイトルに「官能小説を書く女の子」ってあるんだからさっ!美少女文庫にも、みかづき紅月さんやわかつきひかるさん、七海ユウリさんなど、女性作家陣も揃っているので、女性作家陣と重ねあわせながら読めるのかなーってレジに持っていったときは期待していたんだよ。まぁ、タイトルから中身を想像して勝手に期待していた私が悪かったけどさっ。

で、官能小説は確かに出てきますけど、あんまり関係ありません。最後のオチ、実体験に則さないとラストがかけないの・・・・、だから作品を最後まで完成させることができなかった・・・という結末を迎えるためだけ。あと、ちょこちょこととえっちぃシーンはあるけど、それなら他のエロコメの方が美味しいと思います。

ストーリーは、官能小説というよりも、TSもの。ヒロイン・月が男装して学校では男子として過ごす。そのために主人公・真一が誤魔化したり、策を練ったり。で、まぁ、クラスの女子・藍川恵*1にバレそうになるけど・・・・と、TSものの王道です。

私が、この作品をつまらないと感じた理由其ノ壱は、作者の文体。淡々と進む文体で、どうも盛りあがりに欠けるんですよねぇ。司馬遼太郎からだいぶ格落ちした、自称文学青年が書いたような淡々とした感じ。とある飛空士への追憶のような濃厚さを目指すのか、中の下!のようなもっとバカな文体を目指すのかはっきりしない中途半端。

つまらない理由其ノ弐。センスが古い。例えば、223ページ。

ちょっときもいぞとっつぁん坊や

意図的に世代ネタを盛り込んでいる作品(例えば「這いよれ!ニャル子さん」)は別として、こんな言葉を使う人はいないと思う。

其の参。登場人物が気持ち悪い。主人公のライバルキャラとして登場する浅井。生徒会の副会長。これが主人公を罵倒するわけです。

「うるさい黙れ口出しするな敷島高一の劣等生」
「その男は平均点すらとったことがないはずだぞ。点数だけでなく、人間としても平均以下のどうしようも無い男さ。なあ、自分でもそう思うだろう千鳥遊?」

現実にこんなこと言う人・・・いないよね?で、上記のように、文体がバカになりきれていないから、この罵倒がギャグに感じられない。面白みがない。

なんかねー、生徒会副会長、成績優秀で、勉強ができない人間を見下すという構図にもステレオタイプ的な古さを感じる。私は、毎年東大や京大にそれなりの人数が進学する高校に通っていたんですが、テレビやラノベなどで上記のステレオタイプ的に秀才を描かれると、違和感と不快感を感じるんですよね。実際に、高校や大学のときの自分及び自分の周囲とだいぶ違うし、単なるお勉強が出来なかった人が僻んでいるような気がするからです。

補足的な批判。絵師の七さん。体のバランスが変。妙なねじれ具合。この人、坊主やりたくなくて状況してイラストレーターになったみたいだけど、実家のお寺を継いだ方が・・・・

ストーリー展開には無理があるが、話がギリギリ破綻していると言えるレベルではないので、星2つ。次回作の構想もあるようだけど、作者は続きを出せるかどうかを心配したほうがいいと思いました。

*1:多分、真一のことが好き。