おかもと(仮)「伝説兄妹!」

※2010年9月25日若干修正の上、追記

伝説兄妹! (このライトノベルがすごい!文庫)

伝説兄妹! (このライトノベルがすごい!文庫)

小樽商大生による、小樽商大生のためのラノベ。いかにも!という感じで楽しませてくれる。ノリは森見登美彦さんに近いかなー。森見さんは京都大学。この作品は小樽商科大学以前もちらっと書いたことがあるんですが、小樽には半分仕事、半分観光で行ったことがありまして、そのときの様子を思い出しながら読んでいました。

私の職場にも小樽商大出身の方が在籍していまして、彼らと呑んだときに出てくる、嘘のようなホントのバカ話。地獄坂で流しソーメンをやったり、緑丘祭で野球拳やったり。・・・これ、小説に出てくるけど、全部実話らしい。ちなみに、小樽商大出身の彼曰く、脱ぐのはチ◯コの皮までOKらしいです。さすがにこの話は書けなかったか。

地獄坂っていう急な坂を登ると小樽商大があって、その坂の途中に商大の学生が住むアパートが固まっているんですよね。で、その商大生が住むアパートってすっげぇボロい。もうね、築何年だよ・・・と言いたくなるような感じ。でもそーいうのがなんかね、味が出ているんだよね。愛すべき馬鹿たち。この辺りも絶対に勧められない観光名所 in 小樽。

自分は小樽商大出身ではないけど、背景が分かっていると、この小説、すっげえ楽しい。小樽商大生あるいは小樽出身者ならもっと楽しめるはず。

馬鹿を愛せるかどうか。このへんが評価の分かれ目になるのかな。ほんとね、どうしようもないダメ大学生・柏木。勉強できない。単位取れない。詩人になりたい。でも才能ない。根拠の無い自信があるようでない。そんな柏木の友達との掛け合いもGJ!!リアル感がありすぎる。

中身についても感想書きますかー。前半は、バカ展開。柏木とデシ子のアホな行動を見て楽しむ。徹が登場する中盤は少しシリアスに。後半はデシ子救出作戦。んー、とまあ、書いちゃったけど、全編通してくだらねぇーなぁーという雰囲気が漂う。ラストもねぇ、柏木がデシ子にしっぺ、デシ子はつねって対抗だからね。緊張感無し!

ただ、ラノベにある種の清潔感、お行儀の良さを求める人にとってはきついかな*1。私は終始悪ノリした感じで突き進む小説もOKですけどね。これは、ラノベの対象年齢が高いことを前提にしています。多分、この小説を小・中学生が読んでも笑えない。経験値が違いすぎる。綺麗な主人公、カッコイイ主人公っていうのもエンターテイメントの一つですが、徹底したクズを眺めるというのもエンターテイメントの一つだと思います。今回は後者。・・・最近のラノベは清潔感のある、お行儀のよい主人公ばかりなので、このタイプの作品は珍しい。餓えていたものを満たしてくれる。ここまで徹すると、欲にまみれたあとがきまで逆に清々しく感じます。

コインの裏をみたくない気持ちはわかるけど、表までも否定するのはどうかと思う。自分以外のヤツらの表が出る可能性を奪うのも良くないと俺は思うぜ。美醜は表裏一体だよ

ラストで主人公・柏木が言い放つ台詞。柏木もデシ子の才能に嫉妬したり、金に汚かったりで、醜いところもあるけど、なーんか憎めないんだよなー。自分がダメだってわかっていることもあるし、柏木が書いたくだらない詩も、少しは真実を含んでいるような気もするし。

あしたはみんなしあわせになるんだぜーーー!!

塔の上から落ちる状況で、勢いでこんなこと言われたら、よくわかんないまま、「まぁ、そうかもしれないよな」って思ってしまうかも。

追記(2010年9月25日)
せっかく色々漁っていたら、小樽商大の公式ブログを発見しまして、↓を見つけました。
http://d.hatena.ne.jp/shoudai-kun/20090624
これの「伝説の俺と伝説の俺の弟子の伝説的日々とその顛末:おかもとさん(仮)」が本作品の元ネタだと思われる。

*1:酷評する人も少なくないですね。例えば、うぱ日記→http://d.hatena.ne.jp/iris6462/20100913/1284379181 ただ、私はうぱ日記のこの作品に対する評価を読んだ印象としては、細かいことを気にし過ぎて楽しめなくなっているんじゃないかなーと思いました。特に文体。まあ、勢いで読むものだから、文体について、そんなに違和感は感じなかったですね。さらに、地域ネタについて言わせてもらえば、ラノベでもドラマでもほとんどが東京が舞台だから、同じことを言うなら地方民である私にとってしっくりとしたイメージ湧かないっすねー。小樽の地元ネタがちょっとあるくらいで説明不足だと批判するのは筋違いのような気がする。私はサイゼリヤ松屋などを気軽に利用できる環境にありません。