庵田定夏「ココロコネクト キズランダム」

本日は美少女文庫の最新刊を全巻買いしてきました。近いうちに感想書くよ!

さて。読書感想を書きますかぁ。しばらく感想を書くのが空いていたのも、ココロコネクトを読んでいたからです。相変わらず、三巻が出ているのに2巻を買うという流行に乗り遅れている人間ですが。前巻の感想は↓です。
http://d.hatena.ne.jp/yusuke22/20100626/1277564312

ココロコネクト キズランダム (ファミ通文庫)

ココロコネクト キズランダム (ファミ通文庫)

これは・・・今年読んだラノベの中で間違いなく10位以内に食い込むレベルっ!!
ストーリーを簡単にまとめると、前回と同じく、ふうせんかずらが、太一たち文研部の5人に不思議な現象を起こさせます。前回は、人格入れ替わり。今回は・・・『 欲 望 解 放 』

「ふんせんかずら」はランダムに太一たち5人に欲望解放を起こさせる。欲望解放とは、自分が心のなかで思っていることを極端にしてしまう。心の奥底に秘めている欲望を、表にさらけ出してしまう。例えば、食欲や睡眠欲、購買欲などの笑えるようなレベルから、暴力に至るレベルまで。


だから。


心の奥底を隠せない。相手のことを思っていて秘めていたこと、相手のことを傷つけないように思って理性が言うことを押しとどめていたことも、他人にそのまま伝わってしまう。傷つけてしまう時もある。桐山唯は、直接男性を殴るという身体的な傷を。思っていることをそのまま口にしてしまった太一は、稲葉の心を*1。そして、太一も、蒼樹に。


前回のランダムな人格入れ替わりよりも、もっと直接的で、もっと乱暴で、もっと残虐。


でも。それだからこそ。傷つけあった時から回復したときの絆は前回よりも強い。瀕死の時に回復するともっとパワーアップするのはサイヤ人だけじゃない。文研部の5人の友情も、サイヤ人理論。

欲望解放からの身を守るための最善の手段は、引きこもること。他人とかかわらないこと。文研部の5人は、意識的に、あるいは無意識的に、お互いに距離をおこうとする。むずがゆい太一。何とかしたいと思っている太一。

この作品は、ど直球の友情モノ、くさいレベルの青春モノ。でも、だからこそ、面白いんです。

「相談したら友達が傷つくんですよ」
「はぁ?傷つけあったり迷惑かけあったりするのが友達じゃないのか?」

ド直球の後藤の言葉から、物語は文研部の5人の友情を超回復させていきます。もうね、ここからの怒涛の勢いが、読んでいて興奮しましたね。

「結局は自分のためかもしれないけど・・・・でも・・・・、完全無欠に誰かのために行動するのなんて、無理なのかもしれないよな。そんなもん、悟りを開いた善人くらいにしか出来ねえよな」

これは青木の言葉。誰かのためにに、という偽善を自覚して、でも自分のためだけど。唯を助けたい。ひきこもる唯を助けたい。

オレは、唯を傷つけたくない欲求の方が強い自信がある!

・・・青木ぃぃぃぃぃぃ!!!!!!かっこいいよーーーー!!!!

唯「守って・・・ください?」
青木「喜んで」

この台詞は泣けたというか燃えた。唯にベタぼれの青木だからこそ吐ける台詞。


最後の難関は稲葉姫子。稲葉が隠していたこと。相手にバレたくなかったことは、自分の太一への恋心。伊織と太一はいい感じ。青木と唯も満更じゃない雰囲気。自分が太一への恋を『欲望解放』によって明らかにされてしまえば、文研部という居心地のいい空間、人と距離をおいて生活してきた稲葉姫子にとって自分を受け入れてくれていた空間を壊してしまうことになる。

『寂しくない』を知ると、『寂しい』に戻るのが怖くて堪らなかった。

これが稲葉の心情。文研部の5人でいたい。だから、自分の恋心を隠したい。それが欲望解放によって、伊織に気づかれてしまう。でも、そんなの伊織にとっては、理由にならない。

「じゃあそんな稲葉姫子のことが大好きなわたしはどうしたらいいんだよっっ!
「違うでしょ!?二つとも手に入れようとするのが稲葉姫子でしょ!?」
「稲葉んなら、できるんじゃないの?稲葉んなら、友人の好きな男を奪いとってなおかつそれほど気まずくならず、円満に全てを解決することだってできるんじゃないの!?やると決めたら絶対にやる!?どんなに分が悪くても決して諦めない!負けを認めない!それがっ、それこそが稲葉姫子でしょ!傲岸不遜、慇懃無礼、人を操り自分に利する、何を利用しても有言実行、それが・・・稲葉姫子でしょ!?」

最大の恋のライバルからの、最大の励まし。
「最高の女二人を惚れさせたんだからな」。これがラストで、太一に放つ台詞。

稲葉姫子は強い。でも、今回得た強さは、今までの強さとは違う。傷ついて、でも回復したときに、さらにパワーアップした強さ。この強さを読んでいて、登場人物の成長とともに爽快感さえ感じてしまう。
・・・なんかね、もうド直球な友情もの過ぎて面白すぎっすよ!!!!当然星5つで!!

*1:「失望したぞ、稲葉。お前が仲間を見捨てる奴だったなんて」148頁。