シェリー/小林章夫訳「フランケンシュタイン」

んんん・・・なんか他の人のエントリに触発されて書いた内容(他人の褌を勝手に借りて書いた、とも言う)が妙に注目されているんだけど、、、そんなに変なこと言っているんですかね?
このブログを読んでくださっている方ならわかるかもしれませんが、私が読む作品は、新刊もあれば、昔の作品もあります。要は、趣味なんだから、自分が楽しければ流行なんてどうでもいいんです。今回は、その流れで一つ(やっと話がつながった!)。

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

私が地味に着目している光文社古典新訳文庫。なんとなく棚を眺めていたらふと見つけて、「そういえば菜乃ちゃんがこれをよんでいたなぁー」と興味を持ったので*1、購入。

ヴィクター・フランケンシュタインが創造した「怪物」が、その異形の風貌を理由として、常に人間世界から邪魔者扱いされる様子の痛みがひしひしと伝わってきますね。とくに中盤のところで、怪物がフェリックス一家の幸せな様子を眺め、人間世界を学習するあたり。ここで「怪物」が言語を獲得し、知性が身につくんだよなー。でも孤独。話す相手もいないで、幸せな雰囲気を隠れてそっと見つめるだけ。

フェリックスやサフィーと勇気を振り絞って接触しようとしても、拒絶される。怪物はフェリックスたちを理解しようとしているのに、フェリックスたちは拒絶。会話をしていないのに一方的に。怪物を理解してくれるのは、目が見えない老人だけ、という事態。

創造主たるヴィクターにも嫌悪されて、行く手なし。女性の怪物を作ってくれるように頼んでも、ヴィクターは最初は引き受けるけど、禁忌を侵すことを嫌がって、結局は拒否。ヴィクターもフェリックス一家も、怪物に希望を与えるけど、それを剥ぎ取る、という行動。確かにこれは、一番心に突き刺さるわー。ヴィクターの友人や恋人を殺しても、もう意味が無い。復讐心を満たすしかない。でも、わかっていても、やってしまう。自分が死ぬことが唯一の慰め、って本当にどうしようもないよね・・・・

怪物がほしいのは、理解/共感。でも、ひょっとしたら、ヴィクターの話を聞いたウォルトンなら怪物の話し相手になれたんじゃないか、とも思ってしまった。両者は結局別れてしまうんだけど、ウォルトンにはもう少し待て!と言って欲しかったなぁ。

*1:文学少女見習いの、傷心」の感想はこっち→http://d.hatena.ne.jp/yusuke22/20100104/1262625715