庵田定夏「ココロコネクト カコランダム」

ココロコネクト カコランダム (ファミ通文庫)

ココロコネクト カコランダム (ファミ通文庫)

さてさて。今回の読書感想は、ココロコ(?)シリーズの第三弾。前巻の内容があまりにもどストライクだったので、すぐに続刊を買いに行きました。1巻は《表紙パワーで買ってしまったなぁ》感が強かったけど、2巻、3巻と続くと、やっぱり内容が面白いからですね。

太一たち文研部の5人に起きる不可思議な現象。1巻は人格入れ替わり。2巻は欲望解放。で、今回は、『 時 間 退 行 』現象。つまり、(最初は太一は現象の対象から外れているが)誰かが、ランダムに、過去に戻った状態になる。例えば、あるときは「ちゅうしたらおとなになるの?」とつぶやく稲葉姫子4歳に。

過去を思い出させ、また5人に見せつける現象が、文研部の5人に襲いかかる。自分が隠していた過去、忘れていた過去が、徐々に明らかに。青木は、西野奈々という彼女がいたことを、唯に。唯は、ふとさらけ出した青木の過去を見て、自分が奈々の代わりに過ぎないのではないか、と不安になってしまう。その一方で、唯は、空手で男子を相手に諦めていたことを思い出す。男性恐怖症だった過去をそのまま蘇らせてしまう。

でも、文研部の5人は支えあう。くじけていた青木に、一喝。で、復活した青木は清々しいっすね。

「オレ、やっぱり奈々のこと大好きだった。あの過去の自分の気持ちを・・・・否定なんて、できなかった」
「オレは今の自分の気持も否定しない。オレは、今までの人生の、全ての自分を肯定したいんだ。否定したい過去なんてない。嫌なことも忘れたいことも全部全部含めて。それは、全力で生きたオレが残したものだから」
「自分は昔、西野奈々が好きだった。そして今の自分は、桐山唯が好きだ」
「それのなにが、悪いんだ」

「嫌なことも忘れたいことも全部全部含めて」、「否定したい過去なんてない」。だって、「それは、全力で生きたオレが残したものだから」。

勢いとはいえ、他の文研部員がいる前で(いや、いる前だからこそ)、青臭い台詞を言い放つことができる青木マジいい男。

だから、伊織にも伝わる。青木とと同じような考え方が、ふうせんかずらに、過去をやり直すかどうかという選択を付きつけられた伊織も言い放ちます。

だけどわたしは、全ての過去があっていまの自分になれたから。今までの自分の歩んできた道を否定すれば、今の自分を否定してしまうことになるから。それは、したくないから

過去をやり直すことは、今の環境を捨てること。太一たちにまた会える・・・かどうかはわかない。一生懸命生きた過去を見つめることは、《失敗したことを受け入れて、やり直そうとすること》。それは、《失敗したことをなかった事にすること》とは決定的な断絶がある。

ココロコネクトシリーズを読んでいて、恋人や夫婦が理解しあう過程に似ているなぁ、と。人格入れ替わりでは、相手の状況を。欲望解放では、相手の考えていることを。ここまで行くと、大体はものすごく仲良くなっている。今回でも、稲葉が恋のライバルである伊織に普通に恋愛相談をしたり、青木の求愛を唯が受け入れたり、ともうすっかり仲良し状態。簡単な揺さぶりでは負けない結びつき。

しかし、最後に・・・・伊織の雰囲気が・・・・!?と。続きが気になる終わり方ですね。今回もクォリティが高い面白さでした。次巻も首を長くして待っています。