壱日千次「社会的には死んでも君を!」

社会的には死んでも君を! (MF文庫J)

社会的には死んでも君を! (MF文庫J)

今回はMF文庫からデビューした新人作家のデビュー作。ちょっと文体が硬いなぁ・・・ま、新人だから仕方ないかぁ*1と思いつつも、楽しめました。

では、読んだ感想を書きますね。
To LOVEる・リトくんになりたいなぁ、、、と思ったことは、一度は思ったことがあると思いますよ、ね?転んだらパンツに顔を突っ込む。ふとした拍子に胸にタッチなどなど。裸や下着姿を目撃なんて日常茶飯事。いわゆるラブコメ現象。でもそれが実際に起きたら・・・?という設定で始まります。

リトくんは男として魅力があるから、パンツに顔を突っ込まれた古手川唯さんは責任とってよね!!!とデレるわけです。

しかし!!!男としての魅力がない人がラブコメ現象に巻き込まれたら社会的には死ぬんですよ、世の中の男性諸君!!ジャニーズのかっこいい人が電車の中で偶然胸にタッチしたとしても起こりはしないですよね。他方、キモオタなら一発でアウトなわけです。私が仕事先でラブコメ現象に巻き込まれたら、セクハラでアウトですね。この主人公も、中学時代は同じ。

高校デビューと同時にデレ過剰気味なヒロインズに囲まれるようになった主人公・八平。ボケと突っ込みが繰り返される会話のターンが面白いんですよね。雰囲気は「生徒会の一存」に近いかな。
ヒロインズは4人。ストーカー気質の義理の姉。ヤンデレ同級生。天然ボケ上級生。そして、中学校時代にであってしまい、ラブコメ現象の原因となった巨乳幽霊。
ヤンデレ同級生とくるか、と思いつつ、やっぱり幽霊・香月を選択したかぁー。香月は幽霊なので周りに見えない。架月を認識できるのは八平だけ。香月と話していても、周りから見れば八平くんは痛い人に過ぎない。だから香月は淋しい。所詮幽霊に過ぎない自分ができることなんて、と。ならいなくなろうとする。でも八平は良い奴だから香月をさがすんですよ。なんとかして見つけようと苦労するわけです。最後、八平にとって香月はやっぱり相棒なんだ、と認識できてよかったなぁ、と。
と、ラストは少し波乱ありだけど基本はラブコメで進んでいます。ヒロイン全員が好意過剰気味なところが面白い一冊。総合評価では星3つですね。

*1:句読点の打ち方がやや細かい。句読点を特に必要としないところで句読点を打っているから文が途中で切れてしまってリズムが悪くなる。例えば、26頁。「八平が、現象の概略をつかんだのは、初めて胸を揉んだ日から半年ほどった時である」。これ、「八平が、」の「、」を入れても文章としては確かに成立するし、状況によっては描写を正確に示すためには句読点を必要とする場面があることも否定はしないが、少なくとも今回の「、」は、文の流れ・リズムを崩してしまっている。ほかも同じで句読点がやや多め。多分これは作者の癖で染み付いてしまっていると思うけど、直したほうが良いと思います。内容は面白いのに文体のリズムが悪く、読んでいて文の流れが切れてしまうせいで評価が下がってしまう。小説は論文や企画書、個人の読書感想ブログとは違う媒体なので、それに応じた文体を使い分けないと。文章や状況を正確に伝えることもたしかに大事ですが、エンターテイメントとしての読書なんだからリズムや面白さを重視すべきです。いい例かどうかは別として、独特のリズムがあるのは例えば京極夏彦