江波光則「ストレンジボイス」

ストレンジボイス (ガガガ文庫)

ストレンジボイス (ガガガ文庫)

ガガガ文庫の1巻完結モノは怪作・傑作が多い、という私のイメージを裏切らない一冊。アニメイトをふらふらしていたときにふと目に止まって購入した作品です。発売時期は今年の1月だったんですが。

登場人物の関係が、全員ダークサイドに堕ちたのび太たちみたい。いじめられっ子の遼介はのび太。いじめる狂気・日々希はジャイアン。直人はスネ夫。で、主人公の水葉はしずかちゃん。

主人公の冷静な観察眼が、人間関係のちょっとした変化を生々しく読者に伝えてしまう。ライトノベルに救いを求める人からすると、ちょっと受け入れがたい作品かもしれない。
遼介は日々希に復讐することを唯一の目的として生活。日々希は遼介たちを虐めることが唯一の快楽になる。どっちにとっても生きる目的という意味では共依存。主人公はただその媒介するだけで、実際に両者を会わせない、というのが最終決断。だから解決したようで解決していない。
中学校という狭い人間関係を捩れさせたら、こうなるかもしれない。おとなになってしまえば世の中が広くなるので、嫌だったら逃げるってのが出来るんだけどね。中学校や高校時代に自分の周囲であった、虐めや、人間関係の風通しの悪さ*1を思い出す一冊。

*1:高校は中学に比べればマシだったが。