浅井ラボ「Strange Strange」

Strange Strange (HJ文庫)

Strange Strange (HJ文庫)

ここ1週間はずーと、最近発売の浅井ラボの短篇集を読んでいました。518ページと分厚いので、結構時間がかかったなぁ。アニメイトでふと見かけて、ついつい買ってしまった一冊。読んでいると、一見まともなあらすじ紹介をしているように見えるカラーイラストがニヤリとさせてくれます。たしかにこれは暗黒短編集だわ。救いがないというか、どうしようもない。この手の小説を読むのは久々なので、ハッピーエンドのラノベに慣れているとちょいとキツイかもしれない。
んじゃ、各編ごとに感想でもぱぱっとかいておきますね。

  • ふくろおんな

最初に読んでいて衝撃を受けた編。ふくろおんなが怖いというか、狂気が怖い。んで、霊能者も雑魚扱いするほどの圧倒的存在。最後もなぁ・・・・・この本の中では、ホラー色が一番強い。

  • ぶひぶひ♥だらだら

江戸川乱歩の傑作・芋虫のパロディ?
田尾も池永も同じなんじゃないかなぁー。いじめられっ子といじめっこという立場は違うけど。どっちも完成されていて、どっちも先は見えている。田尾はひきこもりニートへ、池永はエリートってだけで。田尾は変わることもしないし、池永も変わることはしない。一種の同族嫌悪なのかな、と思った。

  • 人でなしと恋

実は、今までの流れから、ネットで人喰情報を集めている人達自身が人喰なんじゃないか、と疑っていた。つまり、敵だと思って通報させたら、実は仲間を集めるサイトで、啓吾は逆に喰われてしまうんじゃないか、って。そうかなー、と思って読んでいたら、意外や意外。妙な爽やかさを感じた一冊。
鬼の系譜で、人喰いの和音。それに惹かれた啓吾。むしろ、和音を殺そうとする人達のほうが友だちになりたくない。啓吾が殺人に快楽を覚えた理由はいまいちはっきりしないけど、これもやっぱり和音のためについた嘘なのかな。人を自分の為に殺すからこそ、人の気持がわかる。食べ物への感謝っていうと、変だけど、それがストレートに人間へ反映されているなぁ、と思った。

  • Last Day Monster

私が、生き残るためなら何でも合理的な行動を選択する主人公に共感する理由は、自分も合理的な行動を選択するからかもしれない。でも、極限状態で、自分がここまで出来るかは別。
ま、最後で全部破壊されてしまうんだけど、ふくろおんなも、田尾も池永も、和音と啓吾も、全員氏ねば同じなんだなぁ、と思えば、一種の救いかもしれない。

総合:面白いですッッッ!!!特に、ふくろおんな。いつも読んでいるのとはちょっと違った毛色で楽しめる一冊。甘々のものばかり読んでいる人は、たまにはこーいうのもいいのでは?あと、江戸川乱歩が好きな人だったら、おすすめ。