うれま庄司「彼女を言い負かすのは多分無理」

彼女を言い負かすのはたぶん無理 (スマッシュ文庫)

彼女を言い負かすのはたぶん無理 (スマッシュ文庫)

さてさて読書感想。ぱっと表紙とタイトルに惹かれて手にとって、あらすじを見て購入を決意した一冊。実は私も学部生時代、諸事情がありまして、ディベートを少しだけかじっていたことがあるんですよ。参加したのは1回だけだったので、詳しいことはわからないんですが。本作を読んで、あー、そうだったのかーといまさらながらルールの仕組みなどを思い出していました。

ヒロイン・九重崎愛良が表紙。表紙をぱっと見たときの印象とは違って、意外と女の子!表紙とタイトルだと弁が立つ凄い人、という印象で、実際にそのとおりなんですが、作品の中では暗いところが苦手だったり、主人公・桜井君への恋愛感情を少しずつ出したりと、女の子らしい描写が多い印象です。

まー、中身はよくあるストーリーの使い回し。交通事故にあった経験を持つ桜井君は、スポーツ系の部活には入れない。で、強引にディベート部に勧誘される。でも徐々にディベートの面白さに目覚めてきて、最後は、肉体的披露と同じような精神的な高揚感(愛良の言葉を借りれば「ゾクゾク」)を味わう、というもの。途中で部活のメンバーとも協力したり、ラストでは中学校時代からの友達が理解してくれたり、というもの。

多分、この本を読んだ読者にとってMVPの台詞

一度も侵入を許したことがない砦は頼もしいが、一度も侵入したことがない兵士は情けない。

・・・・はい、次!個人的にニヤリとした一言。

「ここだけの話なんだけどよ、2年の高嶺って先輩がめちゃくちゃ可愛いんだよ」(95頁)

「いや、あれはレベル高いよ。全国に彼氏がいても驚かないね」
「愛すべき花のような人だよなあ」(100頁)

・・・・数ページ読んで気付くトリックにすっかりニヤニヤしてしまった。

ストーリーはありがちだけど、結構、面白い。ディベートのしゃべっているときの高揚感って、確かに味わった人にしかわからないかも。私も主人公の桜井くんのように、余計な一言を言ってしまうことが多いんですよね。ぼそっと相手をいらつかせることを言ってしまったり。私も同じく、担任の増岡にはいらついていました。いらついている理由と原因及び反駁を明示的に言語化できる様子を見て、私も桜井君と同じく、自分が、立場が上の人間であっても崩すことができる爽快感を感じていました。

これはこれでおもしろい一冊。評価は、星4つということで。