上月司「レイヤード・サマー」

レイヤード・サマー (電撃文庫)

レイヤード・サマー (電撃文庫)

410頁とラノベにしてはなかなかの規模。映画化されたらどんなキャスト当てるのかなぁー、と頭の中で登場人物を変換しながら読んでいました。

1.レイヤード・サマー。layered summer・・・・層状になって、重なりあっている夏。
読み始めた最初の頃から薄々感じていた、アンリ→涼平への恋愛感情が、最後のところで出てくるのはきっついですね。しかもそれが涼平が死んだ、少し先の未来で培われたもの、だなんて。文字通り、命を削って現在の涼平のもとへやってきたアンリ、という構図は、今までのシーンをもう一度別な角度から思い浮かべてしまいます。アンリが、涼平に両親のお土産の話をしたとき、家族の話、野々子の話。こっちの世界の涼平は幸せになってほしいなぁ・・・でも、私と関わらないようにしないで、と。

『私じゃない私』が、自分には絶対に叶えることができなくなってしまった幸せな日々を過ごせるかもしれないって、嫉妬してしまいそうで…

明日、涼平の世界に来る、自分への嫉妬。幸せな日々を過ごすであろう、もうひとりの自分に対する嫉妬。・・・・ アンリ(※涼平の世界に来た、髪の色素をが抜け落ちたほう)の別れが、今生の別れとなってしまうことを急に意識させるわけで・・・・

2.私はアンリよりも野々子派。肩の怪我をしてまで自分を守ってくれる騎士に惚れて何が悪いッッッ!!涼平の朴念仁!と思いながら読んでいました。怪我をしたから、じゃなくて、やっぱりいい男だと認識したから世話をしてくれるんですよ、と。さっさと付き合えこいつら。色素が残っている、新しいアンリとの付き合いなんて、過去のアンリに対する配慮だろ・・・。ののさんを不幸にする男は、私が許しませんっ

3.『子宮喰い』についても。明け透けときっついことを語られるのって、読み手としては精神的につらいものがあります。好きな女の子とえっちするの?という言葉にも、ハルが抱える過去(多分、研究所の男性に陵辱されたのではないか、と)を伺ってしまう*1

少しボリュームは多めかもしれないが、単巻完結構造で、なおかつある程度の実績がある作者の本だから読みにくいこともない。これはこれで読んでいて良かった一作。

*1:以前読んだ紅玉いづきさんの作品を参照。http://d.hatena.ne.jp/yusuke22/20101108/1289235451