紅玉いづき「MAMA」

人を喰った小説を書く作家・紅玉いづきさんの作品。デビュー作の「ミミズクと夜の王」の続編・・・・というか、同じ世界観を舞台にした作品。前作に出てくる聖騎士様もちょっとだけ登場。奥さん愛してんだなー、とわかる。

今作は、2008年に出版されたもので、少し昔のもの。前巻を読みまして、紅玉いづきさんは私の中では《ゆるり追いかける作家リスト》に登録されています。前置きはさておき、感想書きますっ!

MAMA (電撃文庫)

MAMA (電撃文庫)

幼きトトは、落ちこぼれ。神殿の奥深くで、封印されし悪魔・ホーイチを目覚めさせてしまう。そこから、ホーイチはトトの使い魔に、というところから物語がスタート。

前作では、ミミズクと夜の王の関係は、恋「愛」。今回は、ホーイチとトトの関係は、母性「愛」でしょうか。作中では、ホーイチとトトの関係を、友情でも愛情でも母親としての愛情のどれでもあるようなことを書いていますが。トトが、真名を授けたホーイチに対して抱く最初の感情は、母としての愛。でも、まだまだ女の子が、おままごとをするようなレベル。そして、この物語は、トトが、真の母性愛に目覚めるまでの物語。

もう一人の母・トトの母も、トトへの全力の愛情。だからこそ、ホーイチの放棄を望む。自分の娘が、使いまによって不幸になることを嘆いて。
それでも、トトは、ホーイチへの愛情を注ぐことはやめない。ときには、自らの生命力を削っても。ホーイチも、トトを守ると宣言するゼクンに軽く嫉妬しながら、守る。あー、これは女の人だからこそわかる物語なのかもしれない。二人の母(トト、トトの母)とも、自分と一体だったモノは、離れていても自分の一つ、という感覚を持っている。男である私には、ちょっとわかりにくいけど。でも、男である私は、ホーイチの立場に立って、トト→ホーイチへの愛情の注ぎ方を想像すれば、自分の過去を振り返ることになるかもしれない。続編の「AND」では、新たに生まれ変わったホーイチへ、トトが全力で愛情を注いでいることがわかるなぁー。
これ・・・・・よくよく味わいたい作品ですね。噛めば噛むほど味が出てくるような。気取っているけど、嫌味ったらしくない紅玉さん独特の文体が、紅玉さん自身の女性としての考え方を描写している。この作品好き。