カミツキレイニー「こうして彼は屋上を燃やすことにした」

こうして彼は屋上を燃やすことにした (ガガガ文庫)

こうして彼は屋上を燃やすことにした (ガガガ文庫)

ガガガ文庫からの新人デビュー作です。おはなしは、オズの魔法使いのオマージュ。主人公の女の子が、ドロシー。あとはブリキ、カカシ、ライオン。一見無関係な彼らが屋上に集まることで、物語が動き始める。

屋上という居場所に集まる何かをかかえる人を描いた作品、という意味では、以前読んだ十文字青さんの作品を彷彿させるなー。アレは青さんの真骨頂を発揮した作品だと思っています。

今作、ラストのドロシーの台詞。

「私たちに、もう逃げるとこなんてないんだよ。これ以上、どこへ逃げられるっていうの?」
私たちにできることは、現実と戦って、乗り超えること

屋上に集まる四人のために。そして、生きていないと、謝ることができないとブリキに向かって諭すために。もう持っているモノを自覚させる。本人は足りない、と思っていたとしても、もう保有しているから、それを意識するだけなんだ。

総評では、まあまあ、というあたり。うーん、青春モノとして面白かったんだけど、彼氏に振られただけで屋上から飛び降りようとする主人公の女の子が抱く切迫感・孤独感に共感できなかったなー。これはオレが年齢を重ねてしまったからなのかなー。なんか残念だ。