谷川流「涼宮ハルヒの驚愕」前・後

編集Mさん、かーずさん、とりあげていただきありがとうございますーーー。鷹羽センセイのも読んだのですが、今日はまずは涼宮ハルヒの驚愕の感想で行きます。ネタバレ配慮していないよー

ハルヒなら「おまたせっ!!」と快活な台詞で届けてくれるであろう、実に四年ぶりの新作。25日が発売日でしたが、お仕事の事情で行けず。27日(金)に入手して、土日ずっと読んでいました。

お話の中身はもちろん有名なのでいちいち言及する必要ないですよね。そういえば、はてなの方でブログを綴るようになってからも、涼宮ハルヒシリーズの読み返し企画は実行していましたね。その一その二、と。

んで、今回。実はかなり内容を忘れていました。ということなので、まず、『分裂』から読み始めよう、とおもいきや『分裂』の内容も忘れていたので、短編などをちょこちょこと見返すところからスタート。んで、『分裂』を読みきってから『驚愕』へ、という流れ。実質的には、単行本合計四冊くらい読んでいたかなー。今回の土日はずっとハルヒでした。

『分裂』の後半は、謎のα-ver.とβ-ver.に展開が分かれていました。αがお気楽・楽しいSOS団的展開で、βがアノ長門が病気になってしまう、深刻展開。この謎もやっと解明。そして、佐々木の存在も。βについて言えば、佐々木的SOS団(仮称)が、SOS団に対立する構造。実際、未来人野郎・藤原は、朝比奈さん(大)と敵対関係にありそうだし。ハルヒの能力を佐々木に移転して、ハルヒではない常識人の佐々木に
よる世界改変を企もうとしていた。

んー、橘京子は敵としてもいまいちだったなー。

今までのSOS団は、ハルヒには振り回されていたけど、少年漫画みたいな『敵』が登場したことはなかったわけで。冬山の遭難時のアレが今回の伏線。キョン君が、周防九曜に襲われたときに朝倉が再々再(?)登場。なんだこの熱血少年漫画的展開。

今回の見所は、実はキョン君をめぐるおとめちっくな、ラブコメ的展開なんじゃないかなー。『分裂』の内容とも重なるが、ハルヒが閉鎖空間を生み出し、古泉が寝不足になった直接の原因は、キョンくんと仲の良い元同級生・佐々木が登場したから。ちょっと気になっている男の子の過去を覗いてしまった、動揺。このときは佐々木と仲良くしゃべるキョン君に対する(まだハルヒ自身は言語化できるほど自覚していないほど軽い)嫉妬を覚えていたのかもしれない。

ラストで時空移動がズレてしまったキョンくん。いきなりハルヒが横になっているときに登場したとき。ポーズとしてはハルヒに襲いかかっているとき。この表情が、かわいいなぁぁぁぁ。「バカ」っていいながらもプレゼントを素直に受け取るときは本当に嬉しそう。ハルヒキョンへの高校生らしい、淡い恋愛感情がちらっちらっと垣間見れて、ニヤニヤが止まりません。それから、ちょっとだけ出ていたけど、キョンくんとハルヒは同じ大学に進学するの?ってことは、きっと劣等生のキョン君の勉強をα-ver.みたいに大学受験の時もずっと見ていたってことですか?二人はずーっと付き合い続けているわけ?そしたら、二人の関係はどうなっているんですかーーーーー?

対する佐々木も。冷静な語り口調で何気なく重大発言。

「僕は考え続けたいね。この森羅万象について。死ぬその時まで」(前・284頁)

「涼宮さんは神のような存在らしい。そしてどうやら僕もそう思われているようだ。彼女と僕、神モドキの二人から好意を寄せられているキミになにもできないなんてことはない。そうするとしたらキミがするんだよ。物語の幕を引き、次のステージの幕を上げるのはキミの役割だ」(前・287頁)

β-ver.キョン君が、SOS団モドキと対決する決意を促す際にさりげない告白とは。佐々木は『分裂』読んでいたときは単純にSOS団と対立するのかなー、と思いきやむしろ冷静。藤原や橘、九耀たちに利用されることを拒み、彼らの思想に賛同しない。考える美人、というべき存在。なんだキョンくんモテモテじゃないか

意外と忘れられがち/語られない点ですが、涼宮ハルヒの憂鬱という作の基本は、ボーイ・ミーツ・ガールだと思います。長門、朝倉、みくるちゃんなど、それぞれに魅力的な女の子がたくさん出てくるので、各キャラにブヒることに専念するとついついこの点を見逃してしまうんですよねー。セカイを再構築する超越的能力保持者・涼宮ハルヒが惚れている相手は、キョンくん一択。セカイ再構築側のハルヒと、セカイと対比された日常(キョンくんへの恋愛感情)を楽しむハルヒという対立構造。まー、要は、《セカイ 対 日常》という軸。『憂鬱』でも、キョンくんは、日常代表として、ハルヒが構築したハルヒのためのセカイを、日常へ取り戻す。

さて今回。藤原によって、囚われたお姫様状態にされたハルヒ。九耀によって殺される寸前のとき。キョンくんが飛びついて救うという意味では、ハルヒをセカイ(しかも佐々木的セカイ)から日常へと取り戻したことになるけど、『憂鬱』のときとは重みが違うよなー。キョンくん自身が自覚しているように、この一年間で経験したトンデモ出来事。これを楽しいと思っているキョンくん。α-ver.でもキョンくんはハルヒに好意めいたものをいだいていることを伺わせている(前・211頁)。そしてハルヒ自身も、憂鬱のころとは異なり、日常を楽しみ始めている。もちろん、周りを振り回して、だけど。あー、『驚愕』のラストで、キョンくんがキルヒを救った出来事には二重の意味があるのか。まず、未来人野郎・藤原、九耀、橘京子が構築しようとしたセカイを、日常へと取り戻すこと。そして、ハルヒが徐々に馴染み始めている日常を守ること。うん、こういうふうに捉えれば、セカイ系をめぐる作品を語るときに何かの視点になるのかもしれない。

あ、ちなみに『驚愕』(後)表紙イラストの佐々木可愛いです。知的な美人。

《総評》四年は待たせたなー。富樫状態に陥ったんじゃないかなど、いろんな噂があって、実際はどれが真実なのかわからないけど。続刊かせ出てくれて本当に嬉しい、というのがまず出てくる感想。そして、やっぱり、面白いですっ。登場人物には個性があるし、やっぱり、ハルヒキョンくんのやりとりのところはボーイ・ミーツ・ガールものとしてニヤニヤしてしまいます。そんでは続刊・・・・今度は期待していいんですよ、ね?そんなに待たせないで続きが出せ・・・るんですよ、ね?